日本人は、戦前まで有用かつ当たり前の作物として有害物質の少ない無害な大麻(麻)をさかんに活用してきました。しかし、現在では有害物質を多く含む大麻すなわち、薬物、マリファナのことと解釈されることが残念ながらほとんどです。しかし、我が国においては歴史的に大麻草の葉や花穂を乱用する習慣などは見られず、日本人が大切にしてきた麻の文化はマリファナ濫用とは全くの無縁です。
 そして、私たちはマリファナ濫用の害やその蔓延防止の必要性を十分理解した上で、無害な麻の生産をめざしています。

厚労省と栽培農家の協議(23日、厚労省で)白黒

 つまり厚労省と、私達とは本来味方同士のはず。お互いの不信感から、敵味方のような状況にならないようコミュニケーションをきちんととっていくことが必要です。

 8月23日。日本の麻の生産に関わる者の有志達と厚生労働省 医薬・生活衛生局の鎌田光明局長を訪ねて「大麻行政の見直し」について陳情を行い以下の要望書を手渡しました。




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 終始共感的にかつ熱心に対応いただき、私たちの願いと規制側の思いは同じ方向性にあることが確認できました。
 厚労省と私達が連携し、マリファナ等の蔓延防止と日本の麻の保護と再興を目指していきます。

※この文は、厚労省主催にて令和3年4月23日に行われた「第5回 大麻等の薬物対策のあり方検討会」において筆者が発表した発表原稿です。( 参考:第5回 大麻等の薬物対策のあり方検討会 議事録 プレゼン 要望書 ) 


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 本日は、混乱を極める大麻の状況について議論いただけますこと。大麻草栽培に携わる者として、また、なおりにくい痛みを持った患者を支える立場にある者として感謝申し上げます。
 この混乱が治まり、乱用や不適切な処方が起こり得ない状態で大麻草の薬効を必要とする患者さんに届けることができたり、日本の伝統としてあるいは一般産業としての大麻草の栽培や活用のための技術が健全に発展したりする社会となることを願って今回は、お話させていただきます。
まずもってお断りしておきたいのは、私は、大麻を含む規制薬物の「医療における適切な使用」以外の解禁や非犯罪化には、明確に反対しています。わが国は、他先進諸国に比べ大麻を含む規制薬物の生涯経験率が格段に低い誇るべき状況にあります。
 それは、日本に住む、ほとんどの人がマヤクの害、つまり薬物で快楽を得ることの恐ろしさや不衛生さを直感的に理解できているからだと思います。このような真面目な国民性を日本の佳き伝統として大切に未来につなぐことは、ともすると快楽目的で悪用される場合がある大麻に関わり大麻について語る者の義務と私はとらえています。
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 そもそも・・日本の大麻の文化は、保健衛生上の問題となるマリファナなど・・とは無関係で無害です。保健衛生上の問題が起こらない品種の大麻草つまり日本の麻を栽培することにどんな問題があるのでしょうか?大麻取締法は、本当は何を取り締まるべきなのか考えていただきながら以下の説明をお聞きください。

 大麻とは本来、アサ科アサ属つまり植物としてのアサ(麻)の別名で、亜麻(リネン:アマ科)や苧麻(ラミー:イラクサ科)やその他の「麻」と呼ばれる植物との混同を避けるためなどに用いられる名称です。そこから転じて「神社のお札」「アサから作られるマヤク」などの意味に用いられます。
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 アサから作られるマヤクは、マリファナ・ガンジャ・ハシシなどと呼ばれますが、この場では、これらをまとめて「マリファナ等」または「マリファナ」と呼ぶことにします。また、農作物としての大麻は「麻」と呼ぶことにしますのでそのようにご理解の上お聞きください。

 わたくしの住む岐阜県神戸町では祭礼の「たいまつ」として用いるため麻の栽培を続けています。今から10年ほど前、私たちの麻畑から興味本位の未成年によりその葉が盗難されるという事件が起こり、管理不行き届きを理由に県当局よりその栽培が禁じられました。「私たちの麻は、マリファナ等にはならない無害な大麻草であるのに栽培禁止はおかしい」などとして、栽培再開を求め活動し翌年の再開を勝ち取りました。以後、日本麻協議会を立ち上げ日本の麻文化を守るための活動をしています。

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 マリファナになる大麻草は、その葉や花穂に精神異常誘発物質THCを多く含む保健衛生上の危害が心配される植物です。しかし、わが国在来の麻のほとんどは遺伝的にTHCの含有率が低く、乱用される可能性のない品種といわれています。更に、わが国においては、歴史的に大麻草の葉や花穂を乱用する習慣などは見られず、日本人が大切にしてきた麻の文化は乱用とは全くの無縁です。

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 ですが、世間では正しく分別されない混乱した状態が続いています。


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 その原因の一つが麻薬対策課の方々から発信されている情報だということは誠に残念です。例えば、Web上に公開された「ご注意ください 大麻栽培でまちおこし?!」と名付けられた日本の麻とマリファナ用大麻草をごっちゃまぜにしたパンフレット。貴重な伝統を守る生産者を窮地に追い込みかねない内容のパンフレットで、酷すぎるのではないかと思うのは私だけではなく東京新聞も指摘しています。
 この件については、この場をお借りして正式に抗議をさせていただきたいと思います。正規の栽培者の尊厳を守るための十分な配慮ある説明を加えての削除あるいは、大幅改定を求めます。



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 また、大麻栽培免許を出す立場の各県の担当課の対応も分別できず混乱しています。
 神事や日本の伝統産業などで使われる麻の茎から作られる「精麻」の供給を目指して、2014年に立ち上げられた一般社団法人「伊勢麻」振興協会という団体があります。
 当然ながら全国の神社や伝統産業等への出荷を目指していますが、三重県当局の取り決めにより県内のみ出荷が許される状態で・・採算が合わず経営は危機的状況です。乱用とは無関係な麻から作られた精麻の出荷を制限することが「保健衛生上の危害」を防止することにつながるのでしょうか?

 ですが・・もっとも厄介なのは、日本の麻の伝統とマリファナの乱用をあえて混同させ、乱用を正当化しようとする残念な人々いわゆる「マリファナ解放論者」の存在です。それは日本社会への保健衛生上の脅威であり、日本の佳き麻の伝統を穢す行為と私はとらえています。そうした、マリファナの乱用を正当化しようとする人々から、日本社会と私達の麻の伝統を守るためには、厚生労働省の皆様と正規の栽培者などが連携し、「マリファナ等の乱用や、日本の麻文化との混同は許さない」と明確な意志を示すことが必要とわたくしは考えています。

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 つきましては、保健衛生上の危害を防止し日本の麻(大麻草)の伝統を守るため大麻取締法をマリファナ等取締法に代えることを提案し、それに加えて以下の要望をいたします。


1 THCの含有率に基づいた基準を定めるとともに栽培免許取得の適正化
 有害成分の正体であるTHCの含有率に基づいた基準を定め、低THCの日本の麻栽培を保護しつつまた一般産業としての麻の活用の可能性を維持しつつ、マリファナ等の乱用を防止する体制構築を提案します。また現在事実上、新規の栽培免許の取得は不可能な状態ですが、このままでは日本の麻文化は近い将来滅びます。新規の栽培者で問題になるのは乱用目的の人物の紛れ込みです。それを防ぐため、正当な栽培や加工技術を有しているか、マリファナ等の害や、その蔓延防止の必要性を理解しているかなどを許可基準とした上で栽培免許の新規取得が可能となる制度の確立をお願いします。そして、正規の栽培者に対しては、的外れな行き過ぎた制限を課すことのないよう都道府県に対し助言などを行ってください。

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2 薬物としての大麻をマリファナ等で統一を
 戦前においては、有毒な外国の大麻を印度大麻草などと呼び痲薬に指定し、日本の麻は普通の農作物と区別して考えていました。無毒な大麻と有毒な大麻のイメージを切り離すためマスコミなどにも依頼して乱用薬物としての大麻報道はマリファナ等として統一して表記するようにしてください。

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3 目的の明確化
 「大麻取締法」の目的は本来、乱用を防ぎ一般産業としての大麻を守ることだったはずです。しかし目的が明記されていないことや、最も防ぎたい乱用目的の使用について罰則が定められていないことが誤ったメッセージとなり、乱用拡大を助長しているように見えます。法の目的を明記すると共に乱用目的の使用が罪となるよう見直しを求めます。

4 乱用防止キャンペーン
 正当な目的をもった栽培者と厚生労働省の皆様が連携して乱用防止キャンペーンを行うなど、両者が連携し乱用防止と日本の麻の保護に取り組む体制づくりにご協力をお願いします。

5 質の低い公平ではない情報から若者と日本の佳き伝統を守る
 近年、若者のマリファナ等の乱用が増えていることに危機感をもっています。その原因の一つが、一部の人が、日本の麻の歴史の中に乱用が含まれていたかのように語り、マリファナは安全などという質の低い情報を拡散していることだと考えています。このような誤った情報は日本の伝統文化への大変な侮辱です。先にも述べましたが日本の麻文化は乱用とは無縁です。そして薬物乱用に嫌悪感を持ち、それを悪ととらえる感性こそ古来より育まれてきた日本の佳き伝統です。
 質の低い情報の拡散をくい止め、その悪影響を日本社会から排除するための施策をお願いいたします。

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追加 慢性疼痛患者支援団体として・・適正な医療目的利用を
 質の低い情報の一つとして、マリファナ等やその薬理成分であるカンナビノイドについてまるで、副作用もなく様々な疾患を治す夢の薬のように主張する人が医師免許をもつ人の中にもいます。また、マリファナ等は、様々な疾患の症状を和らげるのでその患者が自己治療に使っているのだから大目に見ないといけない。非犯罪化すべきだと主張する方もいらっしゃるのですが、慢性痛の患者を守る立場からすると大変心配な主張です。
 医薬品というのは、必ず副作用があり全く安全な薬などありえないということを伝えるのが医師の役目。また、医薬品を自由勝手に使えば患者を更に窮地に追いやるのは当然で、勝手な使用はしないよう指導することが医師の努めなのではないかと思うのですがいかがでしょう?

 痛みの治療への使用については、ちょうど今年の2月に「国際疼痛学会」が見解を出しています。その結論は、「現時点では痛みのための大麻やカンナビノイドの一般的な使用を支持することはできない。どのような患者に利益があり、どのような患者に害があるか研究を進めるべき。」ということです。
 言い方をかえると、効果的に使える患者もいるが、一時の痛みの緩和と引き換えに後の痛みの過敏化や生活の質の低下など害の方が大きくなる場合のほうが多い。だけど研究は進めるべきということだと思います。

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 アメリカでは、医療用麻薬の一つオピオイドの不適切な使用によるオピオイド危機が社会問題になっています。日に100人以上の死者を出すこの大惨事の原因の多くがレベルの低い医師による不適切な処方だと聞いています。大麻の医療利用が可能になったら同じような問題がおこる可能性があります。依存性薬物の負の面や害について十分学んだ医師だけが処方できるようにしてください。


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 お伝えしたいことは、まだたくさんありますが大森さんに次を譲りたいと思います。

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