【痛みに苦しむ人々の希望】
オーストラリア ニューサウスウェールズ州では、州を挙げて慢性の痛み対策に取り組んでいます。最新の知見に基づいた全人的な治療法を提案し、より良い医療の普及に努めています。
このビデオは、患者教育用のウェブサイト(ペインマネージメントネットワーク)の中のビデオの一つで、痛み全般について解説しています。
力強く「脳神経科学の進歩によって、これまで救いようがなかった"痛み"に苦しむ人々を救う方法が見つかりつつある。」と述べているのが印象的です。
≪以下その内容の解説≫
◎希望
素晴らしい事は、脳神経科学の研究成果によって、これまで手の施しようがなかった痛みに苦しむ人々を救えるのではないかという希望を臨床医が持てるようになったことです。
私たちのスキルは、人生に対する痛みの悪影響を減らし、痛みの軽減に役立ちます。
◎痛みの役割
本来、痛みは生命を守る機能で、何かがあると"痛み"が発生し、痛覚受容体からのメッセージが脊髄を通して脳に伝わり、そして、私たちは必要に応じた行動をとることができます。
◎痛み情報の調節(フィルタまたはゲート)
一方で、神経系の中でメッセージは、修正されたり変更されたりします。私たちは情報量を調節し脳に伝えるフィルタまたはゲートを持っています。
例えば脊髄には、余分な情報を脳に伝えないようにするためのフィルタまたはゲートがあり、必要な情報だけを脳に伝えています。
このように痛みの仕組みが説明できるようなったことは、痛みの治療に役立ちます。
◎急疼痛と慢性痛はまったく違う
急性痛と慢性痛では、経験の仕方も、治療の仕方も違います。
◎急性痛
急性痛は、どこに異常があるのか脳に知らせるメッセージです。
この痛みには、脊髄のゲートは非常によく働き、強い薬を与えれば、門を閉めることができて痛みのボリュームを小さくすることができます。だから、コントロールがしやすいのです。
◎慢性痛
慢性痛は、強い薬もあまり効きません。
慢性痛の患者は、多くの検査を受けますが、痛みの原因を見つけることは困難です。すべて頭の中で作られたメッセージの場合もあり、また、痛みの引き金となっている怪我や病気が、そんなに大きくないにもかかわらず、ゲートが開いてしまい音量を上げているので、はるかに強く痛みを経験することがあります。
実際には、関節炎、神経の痛み、帯状疱疹の痛み、癌の痛み、自己免疫疾患からの痛み、これらが、多数の人にとっては痛みの引きがねになっています。
そして、ゲートの概念は、これらの人々にも関係があります。ゲートが開きボリュームが上がっていると、痛みの経験が、より強く深刻になり、悪い状況が続いてしまいます。
◎グッドニュース
良い知らせは、ゲートを閉じて、痛みの音量を下げるための手立てが顕かになりつつあること。
脳から脊髄に繋がっている神経系には、ゲートをコントロールするための経路があり、その経路を通って脳から放出された化学物質が下りていきます。
これらのうちのいくつかは、ゲートを開く役割の興奮性化学物質で、これらのうちのいくつかは、ゲートを閉じる抑制性化学物質です。
私たちの思考や感情によって、これらの経路が変わったり、放出する化学物質の種類が変わったりすることがわかっています。例えば、疲れていたり、ストレスにさらされていたり、不安だったりすると興奮性化学物質がゲートを開き、私たちの痛みを増大させます。
しかし、落ち着いてリラックスしている場合は、抑制性化学物質が放出され、ゲートを閉じて、私たちの痛みは軽減されます。
従って、考えや気持ちは、痛みの経験について、非常に重要です。
◎神経可塑性の概念
神経可塑性の考え方は、痛みの治療にとても役立つ概念です。
神経可塑性とは、簡単に言うと脳や神経系は、絶えず変化し続けているということ・・・。つまり、それは痛みを減らすための、脳を再トレーニングする手立てがあるということ。
運動、リラクゼーション、気分転換、瞑想、食事療法など、これらの全てが痛みに対処するのに有効であるということが分かっています。
ただし、一つの手立てで目的を達成できるようなことは、まずないので、いくつかの手立てに取り組むべきです。
このスキルの実践を始めた人々の多くが、2~3ヵ月後に、生活の質を向上させています。
◎痛みを一人だけで管理しない
痛みを一人だけで管理しようとしないことが大切。
友人、家族、医療専門家。それらの人と共に管理に取り組むようにしよう。
これは良い方法ですが、時間と訓練は必要。
そしてその技術を生活の中に位置付けることが大切です。
我が国においても、本格的な慢性の痛み対策が進むことを望みます。
注)以上、医学には素人の文章につき、医学的判断を必要とされる場合は、専門家にご相談をお願いします。
また、間違いなどに気づかれましたらご指摘いただけるとありがたいで。皆様のご指導よろしくお願いします。