令和元年11月23日(祝)
どげんかせんといかん日本の慢性痛治療 ~その痛みをあきらめないために相互に連携を~
内容報告

《講演④》痛みと筋膜

   トリガーポイント研究所所長 佐藤恒士

 

痛みの改善には、栄養・運動・心理が大切で、特に栄養のバランスがとれていないと本当に痛みは治りにくいと感じています。今日は、痛みと筋膜というテーマでお話しをします。

筋筋膜性疼痛症候群の概念は、ケネディ大統領の主治医であったトラベルさんという方が提唱しました。その論文の中で「慢性的な痛みを持っている患者のほぼ半分は永続的な回復を得るためにビタミン不足の問題を解決する必要がある」「自覚されていないビタミン欠乏症の罹患率は異常に高い」と述べています。

これから、痛みと筋膜について話していきますが、運動の面では筋のバランスということでお話ししたいと思っています。私たちは、生まれてこの方いろんな歩き方とか体の使い方のくせを持っています。くせを持っているということはいつも使われているところと使われていないところがあるということになります。そういったところから筋肉や筋膜のバランスが悪くなって痛みが治りにくくなっているという面があるということも話していきたいと思います。

 

栄養運動心理の三つが整っていてもなかなか治りにくくなっているので治療をして補っていくという考え方だと思います。

 

■トリガーポイントとは

まず、トリガーポイントとは何かというお話をさせていただきます。トリガーポイントとは、Wikipediaによると

     圧迫や針の刺入、加熱または冷却などによって関連域に関連痛を引き起こす体表上の部位のことである

     トリガーポイントの留意点としては、疼痛を自覚している部位に多くは存在するけれども、かけ離れた部位に見いだされることもある点である。

トリガーポイントの成因に関しては不明な点もあるが、筋肉を損傷したり酷使したりすることにより生じた筋拘縮が主因であると考えられている。・・とされています。

 

では、いくつかトリガーポイントが起こす痛みの例をみてもらいたいと思います。

腸肋筋という背中側にある筋肉では、骨盤の上の縁辺りにトリガーポイントができるとお尻のあたりに痛みを感じます。お尻が痛いのでシップを貼ったりマッサージしたりしますが治らず、トリガーポイントのところを指圧したりするとお尻の痛みが治るということがあります。

腸腰筋というお腹側にある筋肉の鼠径部などにトリガーポイントができると背中の腰椎付近に痛みが出ます。腰が痛いということになりますが、原因は実はお腹側にありますのでそこを治療しないと腰の痛みが治らないということです。なんで関連痛が起きているのかというのは、諸説がありはっきりしたことは分かっていません。

ヒラメ筋のトリガーポイントは、痛みを遠くまで飛ばします。ヒラメ筋にトリガーポイントができると頬っぺたに痛みを感じたり、噛み合わせができなくなったりもします。頬を指圧しても治りません。ヒラメ筋のトリガーポイントを指圧すると頬の痛みが消えたり、口の開きが良くなったりします。なんでこんなところに痛みが飛んでいくのかということですが、筋膜ライン上で起きているという仮説があります。体を使うのに都合の良いライン上で痛みが起きているのではないかということです。つまり、ヒラメ筋と頬の筋膜ラインに情報交換システムがありそのために起きていると考えると理解しやすいです。

残念ながら、この関連痛という現象は世間に理解されていません。ですから、痛いところだけに治療が往々にしてなされており、そのために痛みが治らず慢性化して困っていらっしゃる方がたくさんおられると思います。

筋膜ラインは、経絡とよく似ています。洋の東西で同じような見方をしているのではないかとも考えています。

 

■症例①

40代男性。月に数回、鉄の輪で締め付けられるような強烈な頭痛があって仕事に行けない日もあって辛い。触診をすると側頭部に強いコリがあり、そこを指圧しても一向に弛もうとしません。高校生の時。酷い足首のねん挫を経験しており今も痛むことがあるとのこと。そこで、腓骨筋を弛めると側頭部が柔らかくなり、頭痛が改善しました。

 

■症例②

40代女性。数か月前から腕が挙がらなくなり、様々な治療を受けたが改善せず、1週間前から夜に疼いて眠れなくなりました。触診をしたら首の付け根辺りと横隔膜に強い緊張がありました。そこで、横隔膜は体の内圧を調整している重要な器官といわれます。横隔膜の堅さが上半身の緊張を生んでいるので、横隔膜を中心に「深前線」をマッサージしていくと夜に疼くことがなくなりました。

 

■運動療法

次に、運動療法についてお話ししたいと思います。私たちは幼少期からいつの間にか体の使い方を学習しています。それが異常な運動パターンとなり、ある筋の活動低下と別の筋の活動過剰という運動のアンバランスを生じさせ、いろいろな障害に結びつくことがあります。それを修正するためには、脳に正しい運動パターンを再学習させるということが運動療法の大きな視点かなあと思っています。

 

■症例③

運動療法で治療させていただいたのが症例3です。30代女性。首や肩のこりが激しく、吐き気を伴うこともあります。営業もされていてストレスも多い。背中が丸まって、いわゆる猫背状態で見た目にもいかにも肩がこるなあという感じ。胸側の筋肉が過剰に緊張し、背中の筋肉は伸びて力が出なくなっていることが分かります。股関節の動きを診てみると、外側には過剰に動き、内側には動きにくい状態でした。これは、お腹側の筋肉(腸腰筋)が緊張し過ぎて、逆に背中側の筋肉(起立筋)が弱って力がでていない状態を示しています。これらの筋肉のバランスをとると自然と姿勢が良くなってきます。普段使ってない筋肉を使うことでバランスがその場で良くなります。しかし、それは一時的でしかないので、一か月くらい今まで使ってないところを使わせることで、脳に再学習させる必要があります。

 

■まとめ

まとめです。

     痛みを改善するためには「栄養」「運動」「心理」が重要。特にタンパク質、ビタミン、ミネラル不足は慢性化の要因。

     痛む所に原因がない「関連痛」という現象があり、それを理解することで、改善率は大幅にアップする。

     「関連痛」は筋膜ラインで起きていることが多いと思われるので、筋膜ラインへのアプローチが重要。

     体の奥深くを支えている「深前線」は姿勢筋であると共に、内圧に関係している「横隔膜」を構成しているので、様々な症状において深前線の調整は必須。

運動パターンは、機能障害を起こす最も大きな要因であり、脳の学習と関係しているため、運動パターンの修正と再学習のセルフケアは、永続的な改善に繋がると思っています。

 

ご清聴ありがとうございます。



※これは、各講演者の皆様のご講演をお聞きした内容を事務局(若園)が理解した範囲で文書化したものです。従って、ご本人の意図と違う内容になっている場合もあることをご理解の上お読みいただきますようお願いいたします。尚、この文書の一切の責任は、事務局にあります。

《他の講演などへのリンク》
主催者挨拶「その痛みをあきらめないために相互に連携を」
難治性疼痛患者支援協会ぐっどばいペイン代表理事  若園 和朗


講演① 「患者だからできること~慢性痛マネジメントの為のリハビリ生活とヨーガ~」
YOGINI ヨガと子供未来教室代表  新里 美帆


講演② 「暮らしの中の東洋医学 ~こころと体を調え、痛みを和らげる鍼灸~」
真央クリニック附属鍼灸室室長、長湯鍼灸院院長  成田 響太


講演③ 「慢性痛に対する遠絡療法の可能性」
国際医療福祉大学副学長、九州地区生涯教育センター長 外 須美夫


講演④ 「痛みと筋膜」
トリガーポイント研究所所長  佐藤 恒士


講演⑤ 「痛みに漢方治療を!」
平田ペインクリニック院長  平田 道彦