2011年05月

 激痛のため日常生活もままならないのに、治療さえしてもらえない患者たちがいます。それがたとえ、命と引き換えにしてもその痛みからの解放を望むほどの激しさだったとしても。
 
 なぜなら、脊髄損傷や脳卒中後の神経障害性疼痛、CRPS、線維筋痛症など難治性疼痛を主訴とする病態は、一部の専門医を除いて知られておらず、わが国の医療体制は、その痛みを治療する仕組みを整えていないからです。
 
 従来痛みは、身体の異常や危険を知らせる警告信号と考えられ、その痛みの原因である異常や危機を取り除くことが重視されてきました。そのため、痛みの緩和はあまり熱心に行われてきませんでした。また、警告信号とは考えられない痛みを訴える患者は、心の問題、精神の病気、大げさ、あるいは嘘と捉えられてしまい、まともに取合ってもらえないことが普通でした。
 しかし、医学の進歩により、神経が傷つくことなどが原因で、痛みを感じる仕組み自体が変化し、そのため激しい痛みが発生するという病態があることが明らかになってきました。悲しいことにその病態には、いわゆる痛み止めは効かず、決め手となる治療法は未だみつかっていません。
 ですが、若干でも痛みを和らげたり、適切に患者を勇気付けたりして患者の生活の質を上げる手立てはあるのです。
 
 抗うつ薬や抗てんかん薬などの一部には、この痛みを和らげる効果があるとされるものがいくつもあります。

 また 近年、大麻の薬効成分である、カンナビノイドはこれらの痛みに効果があると期待されるようになってきて、諸外国では使われ始めています。
 
 各科が連携して、痛みの治療に当たる「集学的痛みセンター」という仕組みが、これらの痛みの緩和や患者の生活の質を上げることに効果があるとされています。
 
 ですが、痛みの緩和に役立つとされる抗うつ薬や抗てんかん薬のそのほとんどが、痛みを止める用途では、健康保険の適用になっていません。
 さらに、カンナビノイドについては、わが国は大麻取締法で、大麻から作られる薬を医薬品として使うことを例外なく禁じています。世界の流れからすると、薬として使えるかも知れないものを一切禁止するとはかなりヘンなことですが、このことを問題とする人はほとんどいません。
 そして「集学的痛みセンター」ですが、わが国ではこの考え方で治療を受けられる施設はほんの僅かです。
 
 と、八方ふさがりのような情けない状況です。さて、みなさんはどう思われますか?
 
【こちらもご覧下さい】 http://www006.upp.so-net.ne.jp/wakasama/
脊髄損傷後の難治性疼痛について→ http://www006.upp.so-net.ne.jp/wakasama/itami/

平成23年6月xx日
厚生労働省健康局疾病対策課御中
全国脊髄損傷後疼痛患者の会
                   
            
難治性疼痛に対する医療の改善に関する要望
 
 脊髄損傷や脳卒中による神経障害性疼痛、線維筋痛症、CRPSなどの難治性疼痛を患った患者の多くが適切な治療を受けられず、厳しい状況に陥っていることが、「慢性の痛みに関する検討会」(以下、「検討会」)で明らかにされました。このような現実は、人道的見地から許されることではありません。また、難治性疼痛の患者は国内にかなりの数おり、それによって医療費の増大、労働力の低下を招いているとの指摘もあります。これらの理由から、難治性疼痛に対して早急な対策が求められます。そこで、患者の立場から以下の要望を致します。
 
1、「検討会」提言の遂行
  「検討会」が行われその「提言」が出されたことを多くの患者は心強く感じています。この提言が、実効性を持つよう予算処置のみに留まらず、責任を持って遂行する「慢性の痛み対策プロジェクトチーム」の編成、「痛み対策基本法」の策定などを要望致します。
  また、「検討会」のメンバーに患者側が含まれないためか、提言の中には、患者の気持ちや立場から乖離したり不十分であったりする部分があります。言うまでもなく医療は患者のためのもの、患者の立場や気持ちを尊重されますようお願いします。
特に、最重度の慢性疼痛を持った患者の気持ちや立場は健常者や中程度までの痛みをもった患者には理解が難しい上に、その患者自身が声を挙げるのも困難です。しかし、最も早く、手厚く対策を講じなければならないのは最重度の患者であることを念頭に充分な配慮を要望します。
 
2、医療関係者並びに一般国民への痛みに対する教育
  現在でも、一般国民はもちろん医療関係者もこのような病態に関して、ほとんど無知あるいは無関心な状態です。そのため、患者は、適切な対応や、治療を受けられず、その上理解されないため疎外感や孤独感など精神的な苦痛をも背負うこととなりがちです。これらの解消のため、医療関係者や一般国民に向けた指導や啓蒙活動を要望します。
  
3、新しい治療薬や治療法の開発
  神経障害性疼痛抑制剤の開発など安全で効果的な治療法が、早く確立されますよう、製薬会社や研究機関へのご支援をお願いします。
  また、より効果的で、体そのものが回復できる治療の研究が進み、患者が安心して医療側に治療を任せられる体制作りを要望します。
 
4、治療法の選択肢が増える制度の改善とガイドラインの策定
  現在、これらの病態に効果が期待される抗鬱薬,抗痙攣薬などの鎮痛補助薬は、そのほとんどが痛みの治療に使うことが認められていないことが「検討会」で指摘されました。これらの薬品を痛みの治療に使うことを正式にお認めいただきますよう要望致します。また、安全且つ効果的にこれらの薬品が使えるようガイドラインの策定をお願いします。その際、抗鬱薬,抗痙攣薬の一部が痛みを緩和する働きがあることは専門家の間では常識ですが、その名称のため誤解を受けることも多く治療活動に支障を来たしております。その薬品の性質を正しく表すための名称の変更も検討をお願いします。
  更に、諸外国で効果が認められている薬品について、出来るだけ早くわが国でも使用できる状態となるよう要望致します。中でも、大麻由来のカンナビノイド系医薬品あるいは医療用大麻については、大麻取締法により、研究すら不可能ですので、この法律の早急な見直しと改正を求めます。
 
5、学際的痛み診療体制の整備と痛みを持ちながら社会復帰できる仕組みづくり
 各科が連携して患者の治療にあたる学際的痛み診療体制の整備を要望します。また、脊髄損傷や脳卒中の患者に於いては、そのリハビリプログラムの中に疼痛管理を位置づけると共に、痛みを持つ患者には痛みを考慮したリハビリが行われるよう、各リハビリテーション病院への指導を要望致します。
痛みのために社会復帰できない患者を何とか社会復帰できるような、労働環境など社会の体制作りを要望致します。
 
6、実態調査と相談センターの設置、情報の提供
  痛み医療に関する相談センターの設置、家庭や施設に引きこもる患者への実態調査と援助、情報不足の患者への情報の提供を要望します。
 
7、患者を支える仕組み作りや患者の声が医療現場に生かされる体制作り
  患者団体や、患者を支えるボランティアへの支援をお願いします。また、患者の声が生かされ、わが国の医療が患者中心のものとなるよう医療現場の改善を要望致します。   
 
8、痛みは死よりも恐ろしいことの認識
  私たちの仲間の中でも、痛みの激しさのために自らの命を絶つという悲劇が起こっております。また、痛みに紛れて癌の進行に気付かず、いきなり末期がんを宣告されるケースもありました。「痛みは死よりも恐ろしい暴君である」とは、シュバイツアー博士の言葉ですが、激しい痛みと共に生きる人生の残酷さを認識いただき、慢性の痛み対策にご尽力いただきますようお願い申し上げます。
 


以上のような要望書の案を作成しました。皆様のご意見をお聞かせ下さい。

第1回全国脊髄損傷後疼痛患者の会開催のご案内

もう一人ぼっちで、痛みに耐えなくてもいいのです。
仲間と共に支えあい、痛みを管理し、癒し治していきましょう。

脊髄損傷後の激しい痛みや同じような症状と戦う患者さんやそれを支えるご家族やご友人、または、わが国の痛み医療に対して問題意識をもつ方々が交流し、お互いに情報交換をする場を持ちたいと考え企画しました。

【会の名称】 第1回 全国脊髄損傷後疼痛患者の会

【 日 時 】 平成23年6月12日(日)13時~16時

【 会 費 】 1000円(会場費として)介助者の方は無料

【 場 所 】 
戸山サンライズ 1階 小会議室
         東京都新宿区戸山1-22-1

【 内容案 】 ・症状、治療法、痛みのしのぎ方などの交流
         ・社会や医療機関の問題点について
         ・
要望書の検討
         ・今後の活動について
 
              【詳しい案内とお申し込みはこちら
 

痛みを訴えることで、疑われたり、
人格を否定されたりすることのない社会にしていきましょう。




 
 

以下の文をまずは、お読み下さい。
 
■疼痛管理の理論と実際
 以前では、手術後などは多少痛みがあるほうが患者が痛くて動かないので、休息と回復に役に立つと言われていた時代もありまししたが、現代ではこの考えは否定されています。
 また痛み止めを使用すれば、余計な医療費になるとか、疼痛なしは自己損傷の原因となる、使いすぎれば薬物の乱用となる等、とか言われあまり痛みに対して関心を払うことは少なかったのです。
  しかし現在の医学において、それらは完全に否定されています。大脳皮質がある限り痛みは感じます。また例えば鎮静剤や鎮痛剤の使用説明の解説書でさえも、強い疼痛時の場合のみ使用とかの表現が使用されたこともありました。このことが鎮痛剤を使用することの制限となっている場合もあるようである。
 現在ではその鎮痛剤の使用は、心肺機能の抑制を抑え、治癒率、生存率の向上のために使用されている。最近では癌の転移を遅らせる働きがあることも判明している。このことは痛みがあると、治癒が遅い、合併症が起りやすい、免疫が低下する、転移が速まると言えます。また例えば以前の癌の治療の医学書におい て、昔は疼痛管理のページはあまり記載がなかったが、明らかに記載が目に見えて増加していることが如実に示しています。また疼痛管理は家族と患者及び病院で働く職員のストレスの軽減に大いに役に立っていることも忘れてはなららい点です。なによりも痛くて苦しがっている患者をみてそのままほっておけるとこが、医師として許されるものか?と言うことです。
 ・・・・・・随分、痛みの治療に熱心なお医者さんの書かれた文章と思われるかもしれません。
 実はこれは、ある獣医さんの書かれた文を「動物」の部分を「人間」の患者に置き換えて書き直したものです。
 ここまで痛みを止めることに熱心なお医者さんは、少ないのではないでしょうか。
 でも、獣医さんの世界では、このような考え方が現在、常識となっているそうです。
 痛みに対する医療は、動物医療の方が人間のそれより進んでいるのかもしれません。
 治りにくい激しい痛みを持った患者さんの生活や、尊厳を守るためには、「疼痛管理」という考え方が絶対必要です。それが「常識」となる日が早く来るよう祈らずにはいられません。
 
■疼痛管理の理論と実際 の原文は
日本ベェツグループさんの
http://www.pet-hospital.org/
痛くない動物医療(ペインクリニック)のページからお借りしました。
http://www.pet-hospital.org/guidance12.html
 
 
【こちらもご覧下さい】 http://www006.upp.so-net.ne.jp/wakasama/

 
 

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