6月12日、戸山サンライズにおいて、「全国脊髄損傷後疼痛患者の会」を行いました。9名の参加がありました。(患者5名、家族2名、医療関係者2名)。
 病状や治療、日常の生活などについて有意義な交流ができました。

 6月13日には、厚生労働省に仲間5名(患者3名、家族2名)で「 難治性疼痛に対する医療の改善に関する要望書」を提出してきました。
 健康局として、難治性疼痛の問題について前向きに取り組んでいると、心強い回答をいただき、手ごたえを感じました。
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平成23年6月13日
厚生労働大臣
細川 律夫殿
全国脊髄損傷後疼痛患者の会
                 事務局  ○○ ○○
           ○○○○○○○○○○○○○
                ℡ ○○○○-○○-○○○○
 
難治性疼痛に対する医療の改善に関する要望
 
 脊髄損傷や脳卒中による神経障害性疼痛、線維筋痛症、CRPSなどの難治性疼痛を患った患者の多くが適切な治療を受けられず、厳しい状況に陥っていることが、「慢性の痛みに関する検討会」(以下、「検討会」)で明らかにされました。このような現実は、人道的見地から許されることではありません。また、難治性疼痛の患者は国内にかなりの数おり、それによって医療費の増大、労働力の低下を招いているとの指摘もあります。これらの理由から、難治性疼痛に対して早急な対策が求められます。そこで、患者の立場から以下の要望を致します。
 
1、「検討会」提言の遂行
  「検討会」が行われその「提言」が出されたことを多くの患者は心強く感じています。この提言が、実効性を持つよう予算処置のみに留まらず、責任を持って遂行する「慢性の痛み対策プロジェクトチーム」の編成、「痛み対策基本法」の策定などを要望致します。
  また、「検討会」のメンバーに患者側が含まれないためか、提言の中には、患者の気持ちや立場から乖離したり不十分であったりする部分があります。言うまでもなく医療は患者のためのもの、患者の立場や気持ちを尊重されますようお願いします。
特に、最重度の慢性疼痛を持った患者の気持ちや立場は健常者や中程度までの痛みをもった患者には理解が難しい上に、その患者自身が声を挙げるのも困難です。しかし、最も早く、手厚く対策を講じなければならないのは最重度の患者であることを念頭に充分な配慮を要望します。
 
2、医療関係者並びに一般国民への痛みに対する教育
  現在でも、一般国民はもちろん医療関係者もこのような病態に関して、ほとんど無知あるいは無関心な状態です。そのため、患者は、適切な対応や、治療を受けられず、その上理解されないため疎外感や孤独感など精神的な苦痛をも背負うこととなりがちです。これらの解消のため、医療関係者や一般国民に向けた指導や啓蒙活動を要望します。
  
3、新しい治療薬や治療法の開発
  神経障害性疼痛抑制剤の開発など安全で効果的な治療法が、早く確立されますよう、製薬会社や研究機関へのご支援をお願いします。
  また、より効果的で、体そのものが回復できる治療の研究が進み、患者が安心して医療側に治療を任せられる体制作りを要望します。
 
4、治療法の選択肢が増える制度の改善とガイドラインの策定
  現在、これらの病態に効果が期待される抗うつ薬,抗てんかん薬などの鎮痛補助薬は、そのほとんどが痛みの治療に使うことが認められていないことが「検討会」で指摘されました。これらの薬品を痛みの治療に使うことを正式にお認めいただきますよう要望致します。また、安全且つ効果的にこれらの薬品が使えるようガイドラインの策定をお願いします。その際、抗うつ薬,抗てんかん薬の一部が痛みを緩和する働きがあることは専門家の間では常識ですが、その名称のため誤解を受けることも多く治療活動に支障を来たしております。その薬品の性質を正しく表すための名称の変更も検討をお願いします。
  更に、諸外国で効果が認められている薬品について、出来るだけ早くわが国でも使用できる状態となるよう要望致します。中でも、大麻由来のカンナビノイド系医薬品あるいは医療用大麻については、大麻取締法により、研究すら不可能ですので、この法律の早急な見直しと改正を求めます。
 
5、集学的痛み診療体制の整備と痛みを持ちながら社会復帰できる仕組みづくり
 各科が連携して患者の治療にあたる集学的痛み診療体制の整備を要望します。また、脊髄損傷や脳卒中の患者に於いては、そのリハビリプログラムの中に疼痛管理を位置づけると共に、痛みを持つ患者には痛みを考慮したリハビリが行われるよう、各リハビリテーション病院への指導を要望致します。
痛みのために社会復帰できない患者を何とか社会復帰できるような、労働環境など社会の体制作りを要望致します。
 
6、実態調査と相談センターの設置、情報の提供
  痛み医療に関する相談センターの設置、家庭や施設に引きこもる患者への実態調査と援助、情報不足の患者への情報の提供を要望します。
 
7、患者を支える仕組み作りや患者の声が医療現場に生かされる体制作り
  患者団体や、患者を支えるボランティアへの支援をお願いします。また、患者の声が生かされ、わが国の医療が患者中心のものとなるよう医療現場の改善を要望致します。   
 
8、痛みは死よりも恐ろしいことの認識
  私たちの仲間の中でも、痛みの激しさのために自らの命を絶つという悲劇が起こっております。また、痛みに紛れて癌の進行に気付かず、いきなり末期がんを宣告されるケースもありました。「痛みは死よりも恐ろしい暴君である」とは、シュバイツアー博士の言葉ですが、激しい痛みと共に生きる人生の残酷さを認識いただき、慢性の痛み対策にご尽力いただきますようお願い申し上げます。

【こちらもご覧下さい】 http://www006.upp.so-net.ne.jp/wakasama/
脊髄損傷後の難治性疼痛について→ http://www006.upp.so-net.ne.jp/wakasama/itami/